8月のメッセージ

 2010年8月4日

南房教会 牧師 原田史郎

自分自身の内に塩を持ちなさい。そして、互いに平和にすごしなさい。

                        (マルコによる福音書9章50節)

 今年は、例年にない猛暑の夏で、毎日、暑い日々が続きます。この暑さで、熱中症のため、既に150人以上の方々が亡くなったそうですので、くれぐれも、お気をつけください。

 この照りつける暑さで、ある年代層以上の人たちが思い起こす出来事があります。それは、1945年(昭和20年)、広島、長崎に原子爆弾が投下されたことと、8月15日の敗戦の日のことです。今年は2010年(平成22年)で、戦後65年、敗戦の年に生まれた人も、はや65歳ということになります。まして、若いひとたちにとっては、太平洋戦争は、歴史上の出来事でしかないと思います。わたしがまだ中高生のころ、年配の人たちが時々、日露戦争の話をしていました。当時、昭和生まれの若い者たちにとって、1904~5年の日露戦争は、大正のもう一つ前の明治のことであり、それは、祖父母の時代の遥かな昔の物語のようにしか聞こえませんでした。

 しかし、先の大戦は、第2次世界大戦と言われ、また、人類史上、もっとも残酷で悲惨な無差別爆撃や原子爆弾の投下など、けっして忘れてはならない破滅の戦争でした。この戦争の悲惨をどのように次の世代に伝え、また、受け取ってもらえるか、というのは、この戦争を知っている者たちの課題です。

 夏、小さい子どもたちに話をする機会があると、わたし『かわいそうなぞう』(金の星社)という絵本の話しをします。空襲がはげしくなる中で、万が一、爆弾が落ちて、動物たちが逃げ出すことを恐れた動物園の人たちが、ライオン、トラ、ヒョウ、クマなどを次々に毒殺します。最後に。ジョン、トンキー、ワンリーの三頭のゾウが残ります。毒入りの餌を食べないジョンはやがて餓死させられます。トンキー、ワンリーもやせ細って、餌をねだりますがなにも与えられません。げっそりと痩せこけた二頭は、もはや一頭では立ち上がれません。二頭は、ひょろひょろと体を支え合って、立ち上がり、餌をください、と芸当を始めたのです。そのけなげな姿を、飼育係はもう正視することが出来ませんでした。20余りの日、二頭のゾウは檻にもたれ、鼻を長く伸ばして絶命していました。

 小さなお話しですが、二度と戦争をしない、させない、平和の大切さが伝わるお話です。今、この動物園では、三頭のゾウが、子どもたちの歓声を集めています。罪もない動物の命まで奪ってしまう戦争に、わたしたちは、今こそ「否」と、声を上げる塩の働きと、平和をもたらす祈りを捧げたいものです。

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