11月のメッセージ

2010年11月3日

南房教会 牧師 原田史郎

ところで、わたしたちは、このような宝を土の器に納めています。この並外れて偉大な力が神のものであって、わたしたちから出たものでないことが明らかになるために。 (コリント信徒への手紙Ⅱ、4章7節) 

 館山の教会にきて、良いと思うことの一つに、広くて花と緑に満ちている教会の庭があります。朝日の登るころ、庭に出て、芝生の上に落ちた落ち葉を集めたり、花に水をやったりすることから、一日が始まります。この朝の清々しさは、素晴らしいものです。

 先日、日本キリスト社会事業同盟の会議と研修会が、長崎のハウステンボスであり、行ってきました。同所には、前にも言ったことがあり、綺麗なオランダの街並みが再生されていて、一寸した異国情緒はあるのですが、今一つ何か物足りない印象でした。そんなこともあり、今回、会場については、あまり期待しないままでの参加でした。ところが、丁度「ガーデニングワールドカップ2010」が開催されていて、研修の合間をぬって、見学することが出来ました。

 この催しものは、「世界のトップガーデナーが平和の地で競う、国内初、花と緑の祭典」という見出しです。世界で最も権威あるといわれる英国のチェルシーフラワーショーを始めシンガポールガーデンフェステバル等で受賞したメダリスト10人が、それぞれの区画を生かして、それぞれの主題に基づいて花や植木を用いてガーデニングしているのです。日本人は石原和幸氏(チェルシーのショウで3年連続ゴールドメダリスト)一人で他は、英米加仏、オランダ、ニュジーランドのガーデナーたちです。テーマも「心の安らぎ」「復活の庭」「手を差し伸べて」など興味深いものですが、わたしはジョン・カレンの「pax et Bonum 平和と善」という庭に心を引き付けられました。

 「パクス・エト・ボヌム(平和と善)」はアッシジの聖フランシスが好んで使った言葉です。彼が修道僧になったとき、最初にしたことは、廃墟になっていた教会を再建することでした。ひとつひとつ、レンガを積み上げて、聖フランシスは小さな教会を建てました。カレン氏の庭には、その崩れてしまった灰色の小さな教会が、百花繚乱の花と木の間にあります。別の見方をすれば、誰も顧みないような、詰らない、なんの変哲もない荒れた教会。しかし、その忘れられた小さい教会の周りには、神さまの深い慈しみとご配慮が満ちている、それが溢れるばかりの美しい花や木々が囲むことによって表現されているのです。

 この庭を見ていましたら、隣の親子連れの母娘が、「あっ、あんなところに教会がある」と驚き、「平和と善とあるけれど、なんだか分からない」と言いましたので、つい思わず知らず、聖フランシス小伝をお話したことでした。

 聖フランシスの有名な「平和を求める祈り」に「わたしを、あなたの平和の道具として、お使いください。」とあります。わたしたちは、土の器にすぎませんが、内に外に満ちている神さまの慈しみを覚えつつ、わたしたちなりの器としての務めを果たしたいものです。

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