8月のメッセージ

2012年8月5日

南房教会 原田多恵子

壺の粉は尽きることなく、瓶の油はなくならない」 (列王記上17章8~16節

 

 今、ロンドンオリンピックがたけなわです。「金メダル、金メダル」とメディアが少し騒ぎすぎのように思いますが、それでも、7日目現在で、松本薫選手が57キロ級の女子柔道で、内村航平選手が体操男子個人総合で金メダルを取れば、やはり嬉しいものです。

 しかし、二人のゴールド・メダリストの陰に、金を期待されつつ、予選、二回戦で敗れ、或いは準々決勝、準決勝までいったものの、三位決定戦に敗北した選手たちもいたことでした。わたしたちはそこに人生のドラマを見る思いです。勝者の栄冠とともに、敗者の無念さや悔しさの大きさを思います。人生もこれから、という若い人たちにとって、勝負ごととはいえオリンピックは、発奮させる何かを与えてくれたのではないかと思います。

 旧約聖書に、預言者エリヤの物語があります。彼は、アハブ王とイゼベル王妃の時代に預言活動を行いました。この王の治世は、バアル礼拝がイスラエルに導入され、主の預言者たちが弾圧された暗黒時代でした。このため、エリヤは、王の迫害を逃れ、ヨルダン川東岸のケリト川に行き、そこで烏が運ぶパンと水によって養われました。

 その後、主は再びエリヤにシドンのサレプタで住むように命じられます。彼は、サレプタに行き、ひとりのやもめに水とパンを所望します。やもめは「ただ壺の中に一握りの小麦粉と、瓶の中」にわずかな油があるだけです」と答えます。それでもエリヤが、主の定めたときがくるまで「壺の粉は尽きることなく、瓶の油はなくならない」と言いますと、やもめは行って預言者の言う通りにしました。すると、壺の粉、瓶の油は尽きることなく、エリヤたちを幾日も養う、という奇跡が起こりました。

 わたしたちの人生にも、思いもかけない事態が生じたり、予定していたものが、ことごとく覆るということが起こります。そのような悩みや行き詰りにあったとき、わたしたちはどうするでしょうか。真に痛ましいことですが、日本では、毎年、三万人以上の人たちが、絶望の中に、自らの命を絶っています。中には、餓死されたケースもあり、豊かに見えるこの国の中に貧困や格差、多くの悩みがあるのです。

 最近カーネギーの『道は開かれる』という本を読みました。そこで著者は、いろいろな処方を提示していますが、彼の両親の生涯は、苦闘と心痛に満ちたものでした。しかし、彼の母親は、毎日、聖書を一章朗読し、悩みを神に訴えて、この戦いを乗り越えたのです。ハーバード大のW・ジェームスは「悩みを解決する最大の良薬は信仰である」と言いました。「それを発見するためにあなたは、ハーバード大に行く必要はない。わたしの母は、ミズリーの農場でそれを見付けている」と、著者はいいます。

 やもめは、最後に残った食物を息子と食べてしまえば「あとは死ぬのを待つばかりです」という絶体絶命の状況でした。後に、エリヤが、この息子を死の病気から救ったとき、彼女は告白します。「今わたしは分かりました。あなたはまことに神の人です。あなたの口にある主の言葉は真実です」主に信頼し、主の御言葉を信じて従っていくとき、わたしたちの壺の粉、瓶の油も尽きることが無いのです。新しいチャレンジの機会が、まだまだ残されているのです。惜しくもメダルを手にすることが出来なかった選手たちも、4年後を目指し、歩み出すことでしょう。

もどる