9月のメッセージ

2013年9月1日

南房教会 原田 史郎

 

「若者は幻を見、老人は夢を見る」  使徒言行録2章17節

 

 夏の全国子高校野球の決勝戦が終わり、人々の関心は早くもオリンピックの東京開催に移っています。それでも、青春を燃やした高校野球は、印象に残るものです。そのとき、ある高校の校歌の出だしが「ボーイズ・ビー・アンビシャス(青年よ、大志を抱け)」を繰り返し、話題になったことでした。此の言葉は、クラーク博士が、札幌農学校の生徒たちに語った言葉として、よく知られています。

 今年の8月28日は、黒人差別の解放者マルチン・ルーサー・キング牧師が、首都ワシントンで「I HAVE A DREAM(わたしには夢がある)」という演説をしてから50年目に当たります。50年といえば、半世紀ですから、彼の夢は実現したのか、という論説が新聞各紙で取り上げられました。人種差別を禁止した「公民権法」や「投票権法」などが成立して、自由は手に入れましたが、依然として雇用をはじめ差別や格差が残されているとのことです。

 それでも、この日リンカーン記念堂で演説したのは、初の黒人大統領オバマでした。そして参加者の多くが、多くの課題を意識しつつ「肌の色ではなく、人格そのものによって、人が評価されるときを願ったキング牧師の夢を忘れないで、前進したい」という思いをもっていたと、いいます。

 「若者は幻を見、老人は夢を見る」という旧約の預言者ヨエルの言葉が引用されたのは、キリストを信じて従う人たちに、聖霊が下ったときのことです。それは、今までにない、全く新しいことがこれから起こる、始まりの時でした。幻も夢も、厳密にいえば違いがあるでしょうが、共通していることは、いずれも、これから起こる新しい未来の出来事に心を向け、その実現に歩みを懸けていくということです。ヤコブは、ベテルで天に架けられた梯子の夢をみて、自分が惨めな敗北者で孤独でないことを知り、共にいてくださる主の導きによって、イスラエル12部族の父となりました。ヨセフもまた、婚約者マリアの懐妊という苦境の中で、主の臨在を確信して、幼子イエスの誕生に大きな役割を果たしました。

明治の先達たちは、「ボーイズ・ビー・アンビシャス」という言葉で、道を切り開いていきました。今の時代は、過去の政治や経済の方策が、有効に作用することが難しいといわれています。でも、このようなときにこそ、聖書を開き、教会の礼拝に連なり、「若者は幻を見、老人は夢を見る」と言うビジョンをあなたのものにして、歩み出してほしいと心から、祈っております。

 

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