6月のメッセージ

2014年6月8日    

南房教会 原田 史郎

「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける」使徒言行録1章8節 

 キリスト教には三大祝祭日があります。誰でもが知っているのは、いうまでもなく12月25日の「クリスマス」です。救い主キリストがお生まれになった降誕日です。その次が「イースター」で、キリストが死から復活された記念日です。この日は、「春分後の最初の満月の後の一番近い日曜日」という、ややこしい決め方をしていますので、毎年3月であったり、4月であったりします。イースターも最近、デパートや女性雑誌がおしゃれに取り上げて、キリスト抜きの、すなわち復活抜きのシ-ズンとして紹介されるようになりました。何か塩味のない塩みたいですが、この異教国日本で、とにもかくもイースターが知られるのですから、と思っています。

さて三番目の祝祭日は何でしょうか。それは「ペンテコステ」といわれる聖霊降臨日です。ペンテコステというのは、「50番目」という序数を表すギリシャ語で、新共同訳聖書では「五旬祭」と訳されています。キリストの復活後、50日目にエルサレムで祈っていた120人ぐらいの人たちに、この日、聖霊が天から降りました。使徒言行録はそのときの様子を「突然、激しい風が吹いて来る音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた。そして、炎のような舌が分れ分れに現れ、一人一人の上にとどまった。すると一同は聖霊に満たされ“霊”が語らせるままに、他の国々の言葉で話しだした(2章2~4節)」と記しています。

不思議な現象ですが、風とか火は、旧約聖書の中で、神さまが地上で業を現すときや、臨在を示す象徴として用いられています。この出来事は、歴史上、このときだけの奇跡であり、それを今日、再現したり、証明しようとしても、意味がありません。このような外形を取りましたが、聖霊が降ることによって、そこで起こったこと、そこから始まったことが大切なのです。

キリストは、弟子たちに「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける」と約束されました。そして聖霊が降ると、ペトロは力を得て、何事が起こったのかと、そこに集まってきた人たちに話し始めました。ペトロは、キリストが十字架で死んだ後、復活されたこと、神さまがこのイエスを主、またメシア(ギリシャ語ではキリスト)としてお立てになったことを力強く語りました。そして「悔い改めなさい。めいめいイエスキリストの名によって洗礼を受け、罪を赦していただきなさい(2章38節)」と勧めました。そしてこの日、彼の言葉を多くの人たちが受け入れ、洗礼を受けました。

普段、わたしたちは、水平の世界しか見ていません。日常の現実に追われ、たまには自然の美しさに感動もしますが、人間関係と社会の荒波に飲み込まれないために必死で、生きることに精一杯ではないでしょうか。そして、いつしか現代人は、神さまがわたしたちに与えてくださった永遠を思う心や、一度しかないこの人生に与えられている使命や務めについて真剣に考えることをしないで、そのため魂の感受性が鈍くなってしまっているのです。

しかしこの日、聖霊は、神さまの救いを無視して、自分勝手な道を歩いてきた人たちの心の目を開いて、神さまに出会わせ、本当の自分の姿を知らしめてくださったのです。今日も、聖霊は、わたしたちを神さまに向かわせ、キリストの愛とみ業を教え、そこから全く新しい喜びの人生へと変えてくださるのです。

「ペンテコステ」はまだ知られていない祝祭日ですが、新約の教会の誕生日でもあり、また地上を歩まれた人の子としてのキリストに代わる、聖霊、キリストの霊としての聖霊の時代の始まりでもあります。この聖霊の力と恵みがあなたの上にありますように、心からお祈りいたします。

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