3月のメッセージ

南房教会 原田 史郎

2015年3月3日

「しかし、わたしが神の指で悪霊を追い出しているのであれば、神の国はあなたたちのところに来ているのだ」          ルカによる福音書11章20節

 

 主イエスが人にとりついた悪霊を追い出されていると、人々はその力に驚きました。ところが、ファリサイ派や律法学者たちは、「あの男は悪霊の頭ベルゼベルの力で悪霊を追い出している」と非難し、またある者は、イエスを試そうとして「天からのしるし」を求めました。

 「悪霊」と聞くと、現代のわたしたちは、何かオカルト的な異常現象や、非現実的な妄想世界を思い浮かべます。だが、悪霊は、現代のわたしたちの中に働いていて、人々と社会を汚し、傷つけているのです。聖霊が目に見えなくても、神の霊である「聖霊」の働くところに、「愛と平和、喜びや感謝」が溢れるように、目に見えない「悪霊」もまた、その働くところに、「憎しみと争い」生み出し、人格と社会を毀損させ、破滅へと導きます。

 中東のISILや、最近、川崎で起きた中学生殺人事件などを聞くにつれ、悪霊の暗い森は、先進国であれ、砂漠の中であれ、また大人であれ、子どもであれ、その黒い勢力図を広げていることを感じます。

 先週、日本キリスト教団社会委員会が教団の会議室でありました。西早稲田のキリスト教会館が、耐震工事のため、今、新大久保の貸しビルを借りて執務しています。総幹事の要請で、国際マイノリティ会議の開催協力について協議しているとき、職員の方が、これを見てください、ビデオをもって来られました。それは、週末から日曜日に、新大久保でおこなわれるヘイトスピーチのデモのビデオです。その中に、小学生の女の子が、ありったけの声を振り絞って、とても耳に出来ないような激しい罵声で、ののしっている姿が映っていました。

 2013年以降、このヘイトスピーチが各地に広がっているそうです。東京をはじめ京都、大阪、福岡まで広がり、360件以上、週末に差別デモが練り歩いているのです。

この空気は、韓国中国の人たちに留まらず、水俣病未認定患者の会への陰湿な抗議や、ついには、昨年8月、被爆者に対しても、在特会のデモがなされました。悪いのは在特会というのは簡単ですが、このデモを生み出すえもいわれない空気がこの国にじわじわと広がりつつあること、また見て見ぬふりをする無関心も問題だと思います。

 主イエスは、非難者たちから向けられたこの敵意に充ちたヘイトスピーチに対して、論理の矛盾を挙げて、きわめて理性的に反論されました。そのとき言われた御言葉が「しかし、わたしが神の指で悪霊を追い出しているのであれば、神の国はあなたたちのところに来ているのだ」です。

 「神の国」すなわち「神さまの支配」は、既にイエスご自身によってわたしたちのところにもたらされているのだ、と主は言われたのです。 悪霊の力が如何に強くその勢力が優勢のように見えても、悪霊を追い出しサタンの誘惑に勝利された主が、おられるのです。わたしたちは、この恵みの支配を信じて、この暗い森の中に、希望と平和にいたる光の道を見出し歩む者となりたいと思います。

 なお、国際マイノリティ会議は、日本のキリスト教諸派が協力して、今年11月に開催され、在日韓国・朝鮮人、アイヌ、被差別部落、しょう害をもった人たちを中心にして集まるとのことです。まだ企画段階ですが、ヘイトスピーチに負けないカウンター(反証)と神の国到来の証しと成るように祈ります。

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