9月のメッセージ「心のオルミシス」   

2017年9月1日

南房教会牧師  原田 史郎

 

「わたしの兄弟たち、いろいろな試練に出会うときは、この上ない喜びと思いなさい」 (ヤコブの手紙1章2節)

 

 毎日の生活の中で、あまり嬉しくない出来事や、うまくいかなくてくさったり失望したりすることが時たまあります。「試練」というとなにか大変なことが起こったときに使う言葉ですが、そこまでは言い切れない、たいしたことではないのに、それが分かっていながら、やっぱり釈然としない、気の晴れないことが、ままあります。「小さなことにはくよくよしない」という習慣を身につければなんでもないことですが、心といいますか気分的なものもありますし、感情的に割り切れないということなのです。

 先日「なぜ野菜はからだにいいのか」(「毎日新聞」8月20日)という記事を見ました。

今年の夏は雨が多く日照が少ないため、野菜の値段が高騰しています。ホウレンソウ、ナス、ネギが特に高く、安い時は89円位で特売になるホウレンソウは258円になっているとNHK夕方6時のニュースでいっていました。さらにピーマン、キュウリが後に続くそうですが、9月に入れば、かなりの野菜は平年作に戻りますから、それほど大騒ぎをすることはないのかもしれません。このニュースを見た日は、北朝鮮が新型中距離弾道ミサイル(火星12)をぶっ放して、それが襟裳岬の上を飛び越えていったとのことで、それこそ日本国中が大騒ぎでした。深刻の程度からいえば、ミサイルの方が深刻なのですが、野菜の高いのも深刻だと思いました。

 というのは、誰もが野菜は体に良いと信じて、多くの人が毎日積極的に摂っているからです。野菜を良く摂る人は、心臓など循環器系の病気やアルツハイマー型認知症のリスクを下げる効果があるようです。それは「野菜にはビタミンA、C,D,Eやカリュウム、食物繊維、フィトケミカル(野菜の色素や辛みに含まれる物質で、リコピンはとまとの赤、カロテンはニンジンのオレンジ色、アントシアニンはブルーベリーの青)と呼ばれる栄養素が多く含まれているので、からだにいいと思われています」と、米山公啓氏はいいます。

ビタミンCやEは、いわゆる抗酸化物質で、体の酸化(体のさび)を中和する作用があるので、サプリメント等で摂っている人もいるでしょう。ところがこのビタミンCやEが、実際に病気を防いだり、進行を抑えたりすることは立証されていないのです。

 以前、わたしも循環器系の病で、九死に一生を得たことがありますが、サプリメントを飲んでいたのに何故、と思い、お茶ノ水の東京医科歯科大学の近くにある医学書専門店をまわり、何冊かの本に目を通しました。そのとき読んだサプリメントに関する医学書は、どれも効果に疑問を付しているものばかりでした。

 ところが最近、野菜の功用について、新しい説が登場してきました。それは野菜に含まれている「微量毒素」の功用です。この毒素は、害虫から身をまもるために植物が持つよようになったもので、「苦み」として感じられます。米山氏はこの微量毒素について「この低濃度の毒素を食べることで、人体の細胞に軽いストレスを与えることになり、それに打ち勝つための反応が起きます。これを『オルミシス』と呼びます」といいます。高濃度では毒でも、低濃度であれば、体も対応力に余力があり、それを克服し、それが細胞の回復力になるのではないかという訳です。

 こう考えると、不条理と罪の世界では起こることが避けられない嬉しくない出来事やうまくいかなことは、神さまが許された「心のオルミシス」ではないのかと思えるのです。以前、幼児教育に携わっていたとき、「耐性」という言葉がよく言われました。試練や苦しみを体験して、子どものこころは、忍耐や我慢を学び、またその体験から、人の優しさや可能性に目が開かれ、ひいては他者の苦しみをも思いやる心を育てるのです。 聖書は「わたしの兄弟たち、いろいろな試練に出会うときは、この上ない喜びと思いなさい」といい、さらに「信仰が試されることで忍耐が生じるとあなたがたは知っています。あくまでも忍耐しなさい。そうすれば、完全で申し分なく、何ひとつ欠けたところのない人になります」(ヤコブの手紙1章3~4節)と勧めます。「心のオルミシス」も全きひとになる心の栄養素なのです。

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