(十戒講解その6)「あなたの敵を愛しなさい」

(9月13日の説教から)牧師 原田 史郎

出エジプト記20章1~13節

 

 十戒の6番目の戒めは「殺してはならない。(ロー・ラーツァー)」です。ヘブル語ではたったの2文字です。殺すことが良くないことは、誰もが生まれたときから、心に刻み込まれたものとして知っています。それにも拘わらず、人間は何と多くの殺人を繰り返してきたことでしょうか。ある哲学者は「もし、わたしたちの目が、人を殺すことが出来たならば、路上には無数の死体が転がっていることだろう」と言いました。

 この「殺してはならない」という戒めを後のイスラエルは、体に危害を加えるだけではなく、更に内面的にも深化させました。「心の中で兄弟を憎んではならない。復讐してはならない。民の人々に恨みを抱いてはならない。(レビ記19章17~18a節)」 殺人を犯す根底には、動機として嫉妬、憎悪、怒り、復讐などが、人の心に隠されているのです。

 「殺してはならない」ということは、最も否定的なことを否定することです。それを積極的にいえば、主イエスが「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。(マタイ福音書5章44節)」と言われたことと重なります。

 神はわたしたちが、憎しみや怒りで引き裂かれるのではなく、平和に隣人とともに暮らすことをお望みなのです。「自分自身を愛するように隣人を愛しなさい。わたしは主である。(レビ記19章18b節)」

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