奇跡を行うキリスト

 

牧師 原田 史郎

マタイによる福音書14章22~36節

 

「安心しなさい。わたしだ。恐れることはない」(27節)

短い三つに区切られたこの主イエスの御言葉のなんと力強いことでしょう。このとき、弟子たちは、逆風に漕ぎ悩み、疲労と恐れの只中にいました。水の上を歩いて、弟子たちの舟に近づいてこられる主を「妖怪だ」(岩波訳)と見間違え、恐怖のあまりに叫び声をあげたのでした。

この最悪の事態の中で、主は「安心しなさい。わたしだ」と呼びかけられます。風をも静めたもう主(32節)は、わたしたちが不安や恐れのために、自分を見失っているとき、まことの安心をくださるのです。「わたしだ。恐れることはない」と言うのは、父親が怯える子どもの手を握り、「大丈夫だよ、お父さんはここにいるよ」と、いうことなのです。このお方がおられるならば、わたしたちは、何を恐れましょうか。

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