「罪なき者まず石を投げよ」

(8月14日の説教から)

牧師 原田多恵子

ヨハネによる福音書8章1~11節 

 主イエスの前に、律法学者やファリサイ派の人々が、一人の女を連れてきました。彼女は、姦通の現場で捕えられたのです。彼らは、主の教えを聞きに集まっていた民衆の真ん中に女を立たせて「こういう女は石で打ち殺せと、モーセは律法の中で命じています。ところで、あなたはどうお考えになりますか」と、主を訴える口実を得るために問い糺します。もし「石で打ち殺せ」と言えば、愛と赦しを説いている教えと矛盾して、民衆を失望させます。また「打ち殺してはならない」と、赦せば、モーセの律法を破ることになり、民衆の離反を招くかもしれません。

この女は、現場で捕えられていますから、誰の目にも律法の規定を破り、社会の秩序に反し、罪を犯した者であることは明らかです。それ故に、律法学者たちは、律法に基づいた正義をもって、この女を弾劾し、裁きを主に求めたのです。

しかし、執拗に問い続ける彼らに、座って地面に何か書いておられた主は、身を起こして「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」と、言われます。すると「これを聞いていた者は、年長者から始まって、一人また一人と、立ち去ってしまい、イエスひとりと、真ん中にいた女が残った」のでした。

神の前に、わたしたちはだれ一人として、自分は罪を犯したことがない、と言える人はいないのです。主イエスのお言葉に胸を刺された人たちは、改めて、人を容易に裁けないことを知ったのでした。

主は、この女に「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。これからは、もう罪を犯してはならない」と言われます。罰せられないからといって罪が赦されたわけではありません。しかし、罪を赦す方がおられるのです。主のお言葉によって、罪の重荷から解放されて、新しい生き方に踏み出す機会が全ての人に与えられているのです。

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