「奇跡を行うキリスト」 (2月11日の説教から)
牧師 原田史郎 マルコによる福音書4章35~41節 主イエスが「向こう岸に渡ろう」と言われたので、弟子たちは湖に舟を漕ぎ出します。その途中、天候が激変し、激しい突風によって、舟は水浸しになるほどの緊急事態に陥りました。高い山に囲まれたガリラヤ湖は、そこから吹き下ろす風によって、しばしば嵐になるのです。ところが、この時主は、連日の激しい宣教の疲れもあったのでしょうか、艫(とも)の方で熟睡しておられました。死の恐怖に襲われた弟子たちは、主を起こして「先生、わたしたちがおぼれてもかまわないのですか」と訴えました。
この突風は、初代教会における、ローマ帝国によるキリスト者に対する迫害であるといわれます。死の恐怖と先の見えない危機的な状況の中で、教会は、主の関与を強く求めたのです。このようなことは、今日のわたしたちの信仰生活の中でも、しばしば起こることがあります。今まで、平和で穏やかであった日々であったものが、ある日突然、風向きが変わり、乗っていた舟に破滅の危機が襲うのです。
先の太平洋戦争のとき、ある日突然、国家による迫害の手が教会に伸びました。1941年(昭和16年)、諸教派が合同して出来た日本基督教団の6部9部に属するホーリネス教会、きよめ教会に、治安維持法によって牧師が拘束され、拷問によって殉職した牧師もあり、また、教会も解散を命じられ、信徒はバラバラにされたのです。 弟子たちの懇願に「イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、『黙れ、静まれ』」と言われると「風はやみ、すっかり凪になった」とあります。主は自然を制する力をお持ちの方です。キリストは、わたしたちを迫害し、押し潰そうとする不当な圧力に対しても、それを止めて制する力をも持っておられるのです。「イエスは言われた『なぜ怖がるのか、まだ信じないのか』」破滅の危機に為すすべもなく怯えていた弟子たちですが、同じその舟、状況の中おられる力あるキリストに思いが及びませんでした。共におられるキリストを信頼して、どんな嵐であっても乗り切る勇気を頂きましょう。 |