救い主がお生まれになった

          2009年12月20日 説教 原田 史郎牧師 

               ルカによる福音書2章8~11節

 

  キリスト降誕の知らせは、ベツレヘム郊外で羊の群れの番をしていた羊飼いたちに告げられました。彼らに現れた天使は「恐れるな」と呼びかけます。この言葉は、神の栄光である天使の出現に対して、恐れおののいた羊飼いたちへの語りかけです。

 しかし、恐れる人間の思いの中には、わたしたちの持つ暗闇、不確かさへの不安、弱さや罪と言ったものがあるでしょう。先日、20年以上前のいのちの電話の資料を整理していましたら、ある電話相談のレポートがでてきました。ある若い女性が、3か月になった赤ちゃんをかかえて、無性に気が滅入って涙がこぼれる。いっそ死んでしまった方がいいと思うが子どもを残すのはかわいそう。だから一緒に死にたい、という電話です。相談員の適切なカウンセリングによって、思いとどまれたそうですが、このような悩みや不安は、けっして昔のことではなく、今でも私たちの間にあることです。

 このような、わたしたちが持っている恐れや不安に対して、天使は「恐れるな」と呼びかけたのです。 

 恐れではなく喜びが与えられるのです。「わたしは民全体に与えられる大きな喜びをあたえる。」 この喜びは、わたしたち人間を閉じ込めている罪と死から、救い出してくださる救い主がお生まれになった、という大いなる知らせであります。このお方は、「布にくるまって飼い葉桶の中にねて」おられると告げられます。「飼い葉桶の中」とは一番貧しく、低い所の象徴です。

 どんな人でも、わたしのところに救い主は来られなかった、ということがないように、神さまは最もひくい所にイエスさまを、お送り下さったのです。最も高い所におられたお方が、最も低いわたしたちの所に降られた、ここに驚くべきクリスマスのメッセージがあるのです。

 

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