パン五つと魚二匹で

(2月15日の説教から)

牧師 原田 史郎

ルカによる福音書9章10~17節

 主イエスが群衆に「神の国について語り、治療の必要な人々をいやしておられる」と、日が傾きかけてきました。空腹を心配した弟子たちは、「群衆を解散させて、村や里に行かせて食べ物を見つけさせてください」と、主にお願いします。

ところが主は「あなたがたが彼らに食べ物をあたえなさい」と言われます。弟子たちは「わたしたちにはパン五つと魚二匹しかありません」と答えました。他の福音書は、5千人余の群衆が必要としているパンの価格を200デナリオンと推定しています(マルコ福音書6章37節)。これは成人男子労働者の年収にほぼ匹敵します。多分、弟子たちは、このような大金は持ち合わせてはいなかったと思われます。弟子たちは、飢えた群衆を満たすためのなすべき業を何一つとして持ち合わせてはいなかったのです。それは彼らの限界を超えることでした。

このことは、わたしたちの限界、現実と重なることでもありましょう。厳しい現実の前に、力不足で立ち尽くすしか他にない、そんなときがあります。打ち破れない壁があるのです。

しかし、主イエスは、彼らが持っていた「五つのパンと二匹の魚を取り、天を仰いで、それらのために賛美の祈りを唱え、割いて弟子たちに渡しては群衆に配らせた」のです。祝福されたパンと魚で「すべての人が食べて満腹した。そして、残ったパンの屑を集めると、12籠もあった」のです。

わたしたちの貧しいパンや小さな魚、これで何の役に立つのだろうかと思われるようなものでも、主は恵みで満たして用いてくださるのです。主イエスの恵みに信頼して、主に従って歩みましょう(イザヤ書4110節)。

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