(十戒講解 その2)「偶像崇拝からの自由を」

(8月9日の説教から)

牧師 原田 史郎 

出エジプト記20章1~6節

第2戒は、「いかなる像も造ってはならない」「あなたはそれに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない」(出エジプト記20章4~6節)です。

 わたしたち人間は、どうしても神を見えるようにしたいという深い欲求があります。だが人間が神を形造るとき、その「アイデア(概念や思い描いている姿、像)」は、人間の罪と欲望を宿した心や頭から生まれてくる人間の所産、すなわち人間の願望の投映である「偶像(アイドル)」に他なりません。真の神は、ご自身を、このように偶像化することを禁じられます。

古代社会では、偶像は金銀木石を材料とした像として彫られました。モロク、ダゴン、バアル、アシタロテ、アルテミスなどは、偶像化された神であり、また偶像礼拝のなされるところには、不道徳がありました。

偶像化を禁止したこの戒めには、もう一つの意味があります。それは、現代の偶像が、もはや金や銀などにいろどられてはいない、ということです。現代の偶像(神)は、高度に洗練され、人間を抗することの出来ないまでに熱狂させるシステム(組織、仕組み)であったり、人間の欲望から出たもっともらしいアイデア(思想、観念)の形を取るのです。

1945年2月、木更津の第3航空艦隊司令部で連合艦隊主催の菊水作戦という次期作戦会議が開かれました。このとき「全機特攻」という若い搭乗員に死を強要する特攻作戦が参謀から提案されます。80人近い幕僚、指揮官、飛行隊長らが出席していましたが、反対意見は出ません。そのとき、芙蓉部隊長の美濃部正少佐が銃殺刑を覚悟して、この勝算なき無益な作戦に唯ひとり反対しました。後日、部下のパイロットたちは、美濃部氏のことを話しながら、泣いたそうです。70年前のあの戦争の時代、国のためには「全機特攻」という「妄想的猪突戦線拡大」という、通常の理性では考えられない偶像化が、そこで起こっていたのでした。

今日も、真の神に代って、その姿、形を変えた偶像が、人々の心と生活にその腐食を進めています。「あなたはそれに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない」 この戒めは、今も生きているのです。

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