「心も思いも一つにして」

7月9日

     牧師 原田史郎

使徒言行録4章32~37節

復活のキリストによって成立した教会、聖霊の降臨によって力と命を吹き込まれたキリストの共同体は「心も思いも一つにし、一人として持ち物を自分のものだと言う者はなく、すべてを共有」していました。これは経済学者が原始共産制と呼ぶものですが、彼らが私有財産を否定して、特定の制度を意図したものではありません。信じる者の群れが、心も思いも一つにしたとき、このようなことが自然発生的に起こったのです。使徒たちがイエス・キリストの復活を証ししたように、心も思いも一つになる一致は信仰からくる一致でありました。

「信者の中には、一人も貧しい人がいなかった」とあります。それは、持ち寄った代金が「必要に応じて、おのおのに分配されたから」でした。当時、ユダヤ教の習慣で、集めたお金を金曜日毎、貧しい人たちに7日分の食料を配る「クッパ」というものがありました。また、旅人や巡礼のために食べ物を毎日配るという「タムホイ」というシステムもありました。御言葉の宣教と共に、初代教会は、このような相互補助を積極的に行っていたのです。

現在、世界で、一部の冨裕層に冨が集中し、貧富の格差が拡大しています。日本でも、女性の貧困、若い人のワーキングプアー、そして子どもの貧困が問題になっています。2012年には、子どもの6人に一人は相対的貧困であるという厚労省の調査があります。初代教会が担っていた福祉のような社会的な課題は、今日、国や地方自治体の責務に移っていますが、その実施の根底には、初代教会の証ししたような、貧しい人たちへの心からなる思いと一致を欠かすことが大切です。

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