イエスの祈り

 

牧師 原田 史郎

 

 マタイによる福音書6章8節

主イエスは「だから、あなたがたが祈るときは、奥まった部屋に入って戸を閉め、隠れたところにおられるあなたがたの父に祈りなさい」と言われました。貧しい民の多いユダヤでは、奥まった部屋のあるような家に住む人は、殆どいなかったことでしょう。このお言葉は、ファリサイ派の人たちが「人に見てもらおうと、会堂や大通り角に立って祈りたがる」ことに対して言われた表現です。すなわち、人の目を意識しないで、神さまに向き合える「心の場所(密室)」での祈りの大切さを言われたのです。

 また「戸を閉め」てと、言われます。この世の煩いや騒音を遮断して、神さまに心を集中するためには、戸を閉じなければなりません。ヘンリー・ナウエンは、イエール大学での説教で「キリスト者として生きることは、この世に属さず、この世に生きること」であると言いました。それは「この世に縛られない“内なる自”」を持っていることなのです。わたしたちは、いつもこの世の価値観や評価に縛られ、翻弄されています。この世での業績や成功、また毀誉褒貶の中で、喜んだり落ち込んだりするのです。

 しかし、キリストに属するということは、そういう類のものと一切関係はありません。そしてこの「内なる自由」は、ナウエンに言わせれば「独り静まる中で育くまれる」のです。

「神に近づきなさい。そうすれば神はあなたがたに近づいてくださいます(ヤコブの手紙4章8節)」

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