エルサレム入城

牧師 原田 多恵子

マタイによる福音書21章1~11節

 主イエスは、「神の国の王」として、エルサレムに入城されます。そのお姿は、ゼカリヤ書99節の予言が語るように、猛き軍馬ではなく、「柔和な方で、ろばに乗り、荷を負うろばの子、子ろばに乗って」とあるように、「柔和な王」「平和な王」としての入城でした。

 大勢の群集は「自分の服を道に敷き、またほかの人々は木の枝を切って、道に敷き」ました。この木の枝が「棕櫚の枝」であることから、教会は、この日を「棕櫚の日」として、礼拝を守ります。そして「ダビデの子にホサナ」と叫び、「この方は、ガリラヤのナザレから出た預言者イエスだ」と証言しました。

 福音書に6回記されている「ホサナ」は「アンナ。アドナイ・ホシャナ」(詩編118篇25節)からきている言葉です。仮庵の祭り(申命記613節)から始まり、その祭りや行列のときに歌われた詩編歌でしたが、年を重ねるに従い、歓迎と挨拶の言葉になっていったといわれます。しかし、その本来の意味は、「どうか主よ、わたしたちに救いを」という意味です。

群集は、栄光のメシアを思い描きながら、高揚感をもって叫んでいたのかも知れませんが、その魂の深いところで、人々は無意識のうちに「わたしたちを、救ってください」と、叫んでいたのです。そして、この救いのために、主イエスは、力を誇示し、人々に君臨する王ではなく、わたしたちの罪と、わずらいを担って、十字架へと歩まれる「柔和な王、平和な王」として、エルサレムに入城されたのでした。「どうか主よ、わたしたちに救いを」と叫ぶ、わたしたちの魂の声に、主は、答えてくださるのです。

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