「神なき者にも聖霊が」

(9月7日の説教から)

      牧師 原田史郎

   使徒言行録15章1~12節

 パウロたちは、最初の伝道旅行を終えてアンティオケアに戻ってきました。すると、ユダヤから下ってきた人たちが「モーセの慣例に従って割礼を受けなければ、あなたがたは救われない」と言い出したのです。このため、パウロやバルナバと、その人たちの間に激しい対立と論争が起きます。

そこで、問題の解決を図るために、エルサレムで会議が招集され、使徒や長老を交えて、この問題を協議することになりました。この問題の中心点は、「ただイエス・キリストの恵みによってのみ救われる」というパウロたちと、「キリストによって救われるが、それだけでは不十分で律法を守ることも必要である」というファリサイ派から信者になった者たちとの違いです。そしてこれは、福音的キリスト教か、律法的なユダヤ的キリスト教なのか、教会に最初に起こった教理的な対立であり、分岐点でした。

会議は紛糾しましたが、ペトロが立って「神は、わたしたちに与えてくださったように異邦人にも聖霊を与えて、彼らをも受け入れられたこを証明なさったのです」と言いました。すると会衆は静かになり、パウロとバルナバが、異邦人の間になされた神の不思議な業や救いについて語るのを聞いたのです。ユダヤの人たちにとって、異教徒であり真の神を知らない異邦人の間に、神の救いの業が、かくも鮮やかになされることは、信じがたいことでした。大きな驚きが、会議を覆ったことでありましょう。

神さまの働きは、わたしたちの思い込んでいるよりも遙かに大きくて豊かなのです。神さまを、わたしたちの手の中に囲い込んで、神さまを小さくしてはならないのです。

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