「世の富」

(9月20日の説教から)牧師 原田 多恵子

 

テモテへの手紙一 6章1~12節

 

新共同訳聖書のこの箇所は「大きな利得」という小見出しがついていますが、教団の教会暦は、礼拝の主題を「世の富」としています。「利得(ポリスモス)」とは、「獲得する」から、「利益や金儲けの手段」を表す言葉です。

 パウロは、テモテに送った手紙の最後に、当時の教会を悩ましていた偽教師たちのことを取り上げます。教えに基づかない者たちの間に、議論や口論が病みつきになり、そこから、ねたみ、争いなど、絶えまない言い争いが生じていました。「これらは、精神が腐り、真理に背を向け、信心を利得の道と考え者の間で起こるものです」とパウロは言います。そこでは信心さえも利得の道と考えられます。(今日でも、統一協会の霊感商法などをみれば分かることです)

 しかし、真の「利得」は、金銭によるものではなく「信心は、満ち足りることを知る者には、大きな利得の道です」と言います。「なぜならば、わたしたちは、何も持たずに世に生まれ、世を去るときは何も持って行くことができないからです」 ただ信仰のみが、わたしたちを永遠に生かし、導きを与えてくれるのです。それ故「食べる物と着る物があれば、わたしたちはそれで満足すべきです」という生き方があるのです。

 そこでパウロは、テモテに、金銭を追い求めるようとすることを避け「正義、信心、信仰、愛、忍耐、柔和を追い求めなさい」と語ります。そうして「信仰の戦いを立派に戦い抜き、永遠の命を手に入れなさい」と勧めます。

自分を楽しませ、世の富に心を惹かれるのではなく、神を求め信仰の道に歩むことが、わたしたちにとって最大の利得であり、冨であるのです。

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