「木に登って人生が変わった」

 (9月28日の説教から)

                     牧師 原田多恵子

ルカによる福音書19章1~10節

「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい」と主イエスは言われます。何と、そのときザアカイは、道端のいちじく桑の木によじ登っていたのです。何故なら、背の低い彼は、エリコに入られた主イエスの御姿を、人々に遮られて、見ることが出来なかったからです。

ザアカイは、「徴税人の頭で、金持ちであった」と紹介されています。徴税人ということは、ローマの手先であり、みんなの嫌われ者であったということです。

さらに、金持ちなのは、徴税するときに、人々からだまし取ったり、過酷な取り立てをしたことをうかがわせます。

でもそんなザアカイが、どうして木に登ってでも主の御姿を見たかったのでしょうか。それは、彼が人々の評判とは裏腹に、心の深い所で救いを求めていたということです。為政者の権力を嵩(かさ)にきて、居丈高に振舞うザアカイの心は、表とは反対に、孤独と虚しさに荒れはてていたのでした。

主イエスはそんなザアカイに目を留められ、木の下で立ち止まり、上を見上げて呼び掛けられました。これを見た人々は、驚きとともに呟きます。「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった」 何ということだ、という棘を含んだ言葉です。しかし、主を喜んで家にお迎えしたザアカイは、「財産の半分を貧しい人々に施します」と申し出ました。主イエスが来られたとき、ザアカイの心は主の愛によって、憐れみと慈しみに満たされたのです。「今日、救いがこの家に訪れた」のでした。

「この人もアブラハムの子なのだから。人の子は、失われたものを捜して救うために来たのである」と主イエスは、愛の言葉をかけられました。

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